目次

「TENET」のUOZAブログ的考察その2。その1を読んでからご覧ください。もちろんネタバレあり。

「TENET」のおさらい

私たちの世界との比較

前回考察のおさらい。「TENET」の物語は「私たちの世界」をそのまま丸写しにしたものである。「TENETの世界」と「私たちの世界」の比較で説明する。

1.「TENET」の世界は「名もなき男/神」が創造した

私たちの世界では、私たち個人が「名もなき男」である。つまり私たち一人一人が「自分の目に見えている世界」を創造している。人間一人一人が「神」である。

2.「始まり」と「終わり」が重なっている

私たちの世界は『原因と結果がたった1つ』という絶対的真理で構築されている。その原因と結果が「自分」である。

3.時間の流れには「順行」と「逆行」がある

私たちの世界は、時間が未来へ流れているのが原則である。しかし私たちが気がついていないだけで、時間は逆行している時がある。

私たちはいつも「逆行」している

今回の考察では「時間が逆行」していることについて説明していきたいと思う。時間が逆行することはありえないが、実はそのありえないことを普段から行っているのが人間なのである。

わたしは最近、過去のことばかり考えていた。そして人間には『タイムマシンを作ることが不可能』ということにも確信を持っていた。『タイムマシンを利用して過去に戻る』というアイデアを、人間がなぜ思いつくのか、の答えだけは出ていた。

その答えは『人間が過去に戻ることは可能である』ということ。しかし「タイムマシン方式」しか頭の中になかったので「TENET」を見るまで「逆行」というアイデアなど思いつかなかった。

「逆行」というアイデアひとつで「タイムマシンを作ることは不可能」と「過去に戻ることは可能」という矛盾が解消されたのである!ノーラン凄すぎない?

過去に戻るその他アイデア

よくよく考えると「シュタインズゲート 」のタイムマシンは電子レンジ。自分だけはそのままで過去に戻るから、ある意味「TENET」の先をいってるのかも?

というか過去のSF作品の中にも「タイムマシン」を使わずに過去に行く、という作品はあるのかもしれない。そういえば、既に「メメント」で逆行ということは表現していた…。

ちなみに「インターステラー」は宇宙に行くことで過去と時間を繋げている。「宇宙船」は「タイムマシン」と同じである。このことも今回の考察で説明してゆきたい。(できなかったのでまたいつか。)

意識する神と無意識の人間

私たちが「時間の逆行」を行っているなど、信じられないことだと思う。前回の考察でこんなことを書いた。

『全記録を把握』し『時間の順行と逆行ができる』神が創造したということにすれば、『原因と結果が1つしかない』ということが証明できるのである。

つまり「神」は時間の順行と逆行ができる。「TENET」は「名もなき男」が「創造主/神」として目覚めるお話であった。逆行することができる「神」になるには、目覚める必要がある。

目覚めていない人間は「時間の逆行」を認識できていない。だからこそ、人間は時間が逆行することを信じられない。時間は未来にしか進まない不可逆的なものだと信じて疑わないのである。

つまり「神」に成ることができれば『時間が逆行している』ことに意識的に気が付く、ということである。

時間を支配する為のルール

目覚める為のルール

『時間が逆行している』ことについて詳しく説明する前に、まずは時間を支配する為のルールについて考えていきたい。意識的に『時間を逆行させる』には必ず守らなくてはいけないことである。

「TENET」ではしっかりと「逆行」するためのルールが設定されていたが、それらは「神」に成る為に必要なルールでもある。

逆行装置(回転扉)について

映画の中では、時間を操作するとき赤と青で色分けされた逆行装置(回転扉)を使う。

赤い順行部屋から扉に入ると青い部屋へ、時間が逆行になる。青い逆行部屋から扉に入ると赤い部屋へ、順行に戻る。

そんな回転扉に入る時には4つのルールが存在していた。それらルールを守ることがなぜ大切なのか。こちらのサイトから4つのルールを引用させてもらいながら解説してゆく。

ルール1:自分を見つめ続けること

ルール1:入る際は逆行(もしくは順行)する自分を検証窓から見たまま装置の中に入ること。でないと出られなくなる。

シネマトゥデイ

ループにとり残されないこと

自分を見ながら装置に入らないと出られなくなる。これは『輪廻のループから抜け出すことが出来ない』ことを意味している。

人間は「解脱」するまで輪廻転生して何度も人間の一生を体験している。その同じような流れから抜け出すことを「解脱」と言う。『自分を見たまま』輪廻のループの中にいることができないと、抜け出せないということである。

解脱とは救済である

前回の考察で「名もなき男」は『解脱している』と説明してきたが、「解脱」することは自分を「救済」することである。

解脱し救済する為には『自分を見ること』が絶対に必要になる。「名もなき男」は自分を救済する為に生きているから、必ず『自分を見ながら』扉に入る。

自分を省みること

自分のことを省みて行いを正すことが『自分を見ること』である。『自分を見つめ直す』とも言えるのであるが、それを続けていくと、自分が生きている意味を見つけることができるようになる。

逆を言えば『自分を見ない人』は自分を省みることをしない。だから「生きる意味」を見出すこともない。そんな人々は輪廻のループから決して抜け出すことはできないから、自分を「救済」することも無い。ずっと輪廻の苦しみの中に囚われているのである。

自分(真実)を見つける

「生きる理由」を見つける作業を続けると、いつか必ず「解脱」できる。自分を突き詰めていけば、人間のことも突き詰めることになるから、この世界の真実をも見つけることになる。そして、この世界の原因と結果が「自分」であることを信じるのである。

みんなと同じはよくないこと

名もなき男は「主人公」になろうとしていた。その行動こそが『自分を見つめる』ことなのである。「生きる意味」を見出したいのなら、人生の中で自分だけの目標や目的を見つけようと努力する必要がある。

「主人公」を目指すことのない人間は、自分を省みることをせず、同じことを繰り返す人間である。その他大勢と同じ、個性のない人生を歩むことは「脇役」と同じである。

人生論みたいになってしまったが『生きる意味を見つけること』は、自分を救済する為にも大切なこと。「生きる意味」は求めた人にしか与えられないものだから、ただ待っているだけではずっと「脇役」のままである。

ルール2:宇宙旅行にはマスク必須

ルール2:逆行している時は、自分で肺に空気を取り込むことができなくなる。そのため外気の中にいる時は酸素ボンベが必要。酸素マスクをしていれば、それは逆行しているサインだ。装置の置かれた部屋が密閉されているのは、周囲の空気ごと逆行(順行)するため。

シネマトゥデイ

「逆行」したときに必ず酸素マスクをつけなければいけないというのは、「逆行」している時は「無重力の中」に存在しているから。この件は後ほど詳しく解説していく。

ルール3:対消滅はゼロポイントを待て

ルール3:装置に入ることで、順・逆ふたりの自分が同時に存在してしまう。過去の自分と直接ふれ合うと粒子の対消滅が起こるため、接触する可能性がある時は、防御スーツなどで全身を覆うことが必要。

シネマトゥデイ

物質と反物質から生まれるもの

過去の自分と直接触れ合うと対消滅する。対消滅とは、物質と反物質が消滅することで、それによって物凄いエネルギーが生まれるらしい。wikipediaより引用。

物質と反物質が衝突すると対消滅を起こし、質量がエネルギーとなって放出される。これは反応前の物質・反物質そのものが完全になくなってしまい、消滅したそれらの質量に相当するエネルギーがそこに残るということである 。1gの質量は約 9×1013(90兆)ジュール のエネルギーに相当する。

wikipedia

「TENET」の中では物質が「順行する自分」、反物質が「逆行する自分」を表す。だから、直接触れ合ったら物凄いエネルギー量で何かが起こるはずである。

映画の中では「名もなき男」が「過去の名もなき男」に出会っている。しかし気がつかれていないのでセーフだった。直接触れ合うというのは『順行中の自分と逆行中の自分がお互いに認識すること』と言えるのである。

「自分を見つける」タイミング

ゼロポイントは「名もなき男」が「創造主」であることに気がついた瞬間でもある。

前回の考察でこう書いたけれど、「始まり」と「終わり」が重なるゼロポイントは『自分という存在がどんな意味をもつのか知る』ポイントでもある。

そして、先程説明した『自分を見つめる作業』が完了した瞬間でもある。

けれども、その瞬間とは『順行する自分』と『逆行する自分』が出会う瞬間でもあるから、必ず対消滅が起きてしまう。だからこそ『自分を見つける前』に決して「過去の自分」と出会ってはいけないのである。

『自分を見つける前』に「過去の自分」出会ってしまった人がいる。それが「名もなき男」の悪の側面である「セイター」。

セイターは『自分を見つける前』に過去の自分に出会い、情報を渡して「アルゴリズム」を開発していたと思われる。

対消滅のエネルギーは「アルゴリズム」へ

対消滅で生まれる物凄いエネルギーは「アルゴリズム」を起動した時に発生するエネルギーと同じもの。

過去のセイターと現在のセイターは既に出会っていたのだけど、やはり未来から接触してきた自分が自分自身であったと本当に認める瞬間は、ある意味『自分を見つけた』瞬間である。

セイターの悲しみ

『自分自身が人類を破滅させる』という彼の悲しい目標が達成された瞬間に、やっと自分の犯した罪を知る。それが、セイターが『望んでいなかった自分像を見つけた』瞬間である。そこには大きな後悔が存在している。

だからこそ「セイター」は「ゼロポイント」で自殺しようとしていた。『自分を見つけることが出来なかった』セイターは対消滅エネルギーと共に消えようとするのである。

「自分を見つけられない人」は他者に苦しみを押し付ける

「セイター」は人類を破滅させる存在。過去の自分に接触したことで、未来がやってくる前に自分が何者であるか知ってしまったし、そのことを疑わず生きてしまうのである。

未来の自分(他者)のことを信じてしまったがゆえに、人類を滅亡させる存在へと成長していく。

「終わり」側の物語

「TENET」は『名もなき男(ニール)の視点』であったから、世界が破滅する瞬間は描かれていなかったけど「始まり」と「終わり」は重なっている。

人類が滅亡した「終わり」側の物語も必ず存在している。自殺とは自己の消滅である。『自分を見つけることが出来ない人』は必ず他人を殺そうとする。だからこそ「セイター」は「アルゴリズム爆弾」を開発するのである。その罪の重さは「死」の瞬間に知ることになる。

対消滅は諸刃の剣

一方で「名もなき男」は正しく『自分を見つけた』。彼は過去の自分を騙し、見つからないようにした。直接情報を与えるという不正をせず、過去の自分の力で『自分を見つけた』のである。

彼は正しい行いをして、対消滅エネルギーを手に入れている。対消滅エネルギーは自分が「創造主」だと気がついた瞬間に手に入るエネルギーでもある。

それは目に見える「アルゴリズム爆弾」ではなく、目には見えないもの。彼の頭の中(脳)にそのエネルギーは存在する。だから「全記録」を把握し「時間」も操ることができる。

正しい方法で『自分を見つける』人は、そのエネルギーを破壊(終わり)に利用せず、救済(始まり)に利用する。兵器ではなく智慧を手に入れるのである。

ルール4:体温調節には気を付けろ?

ルール4:熱力学の作用によって熱の反転が起きる。そのため燃えさかる炎は冷気になってしまう。

シネマトゥデイ

こちらはいつか深堀りしようと思っている。だから調べていない。もしかして「反重力」が関係してるのかな?とか曖昧なことを考えているのみ。でも、人間の体温に秘密があるはず。

何かの物質を冷却したら逆に進んだ、みたいな記事を昔どこかで見かけた気がするのだが、時間を逆行する為に冷却する必要があるのでは。

時間を「逆行」させる方法

「深い思考」について

ということで、ついにこの世界の秘密を明かそう。時間を「逆行」させるには「深い思考」をすればいいだけである。

というか「深い思考」については既に別の記事に書いていること。まさかその時に「時間が逆行」しているとは思っていなかったのでびっくりしているところ。

「深い思考」とは、頭の中である一つのことに集中すること。わかりやすい例で言えば「瞑想」である。「瞑想」の種類にはいろいろあるけれど、雑念を取り除き「過去の自分」のことだけを考えることがわたしの言う「深い思考」である。

「過去の自分」に対する「深い思考」を、わたしは『精神世界に入り込むこと』と表現している。つまり「精神世界」では時間が「逆行」していることになる。

「死と生」を選択する場所

『精神世界に入り込むこと』は危険な行為である。奥深くに入り込んで戻って来られない人もいる。現代ではそんな人々に病名をつけたりもする。

精神を病んでしまうと「死」を選ぶことも多い。「精神世界」は「死」をもたらす危険な側面があると言える。

けれども『精神世界に入り込むこと』は時間を「逆行」することだから、過去に戻り、悪いことが起きる原因を確認することができる。

「深い思考」は上手く使えば「名もなき男」のように自分を救済することに繋がるのである。「救済」とは『生きることを選ぶこと』。「精神世界」には「生」をもたらす側面もあることを知ってほしい。

「酸素マスク」の必要性

「TENET」では時間を「逆行」するルールにおいて、必ず「酸素マスク」が必要だった。その理由は「精神世界」には酸素が存在しないため。

そこはもう「現実世界」ではない。「宇宙空間」と同じような場所。そこは夢のような世界でもあり、現実と区別されるべき場所。だから「精神世界」に入り込むと「幻覚」を見たりもする。

けれど「深い思考」をしている時、酸素や重力の存在しない「宇宙空間」のようなところに存在していることを証明するのはとても難しい。だからこの話は、信じてもらうしかないと思っている。

わたしのとある妄想

どこかに存在する『反物質の私たち』

「深い思考」をしている時、私たちは「反物質」になっているはずなのだ。つまり、「時間の逆行」と同時に「反物質」になっている。反物質へ変化するというよりか、反物質の自分が別に存在しているのではないか。

わたしたちの意識は「物質の自分」と「反物質の自分」を行き来している。これが私の最近の妄想である。

というのも、私たちが「物質」であるとするならば、必ず対になる「反物質の私たち」が存在しているはずなのである。そうでなければ、私たち人間は生まれてきていないということになってしまう。

「反物質」は精神世界にあるかも?

私たちの宇宙が生まれた時、同じ量の「物質」と「反物質」ができたと考えられている。それなのに、この宇宙には「反物質」がほとんど存在していない。これは現在でも宇宙の謎として研究されていることである。きっと私たちはまだ「反物質」を見つけることができていない。

私はその見つかっていない「反物質」は「精神世界」に存在していると思っている。「精神世界」というもう一つの世界が存在することを信じなければ「反物質」は見つからないはずである。

CP対称性の破れとは

けれど「物質の自分」と「反物質の自分」が出会ってしまったら対消滅してしまう。私たちは存在しているのだから「物質」と「反物質」には多少の違いが存在しているはず。これを「CP対称性の破れ」と言ったりする。

「物質の自分」と「反物質の自分」に何らかの違いが存在しなければ、私たちは対消滅してしまう、ということ。2018年に「CP対称性の破れ」についてちょこっと触れた記事を書いていた。もはや大昔の事に思える…。

物質の私たちと反物質の私たちの違い

その「違い」とは何であろうか、と考えた時にわたしには1つの答えが頭に浮かんでいる。時間の流れである。上手く言えないけど、現実世界(物質)に生きている人の方が「寿命が長くて」、精神世界(反物質)に生きている人の方がわずかに「寿命が短い」のではないだろうか…。

この世界は対称性が支配しているけれど、絶対に「死(反物質)」より「生(物質)」が優勢であると感じている。それが「CP対称性の破れ」に関係していると思う。妄想だけど。

だから「物質」である「現実世界」が優勢になっていて、私たちは「現実世界」を生きているように感じるのではないだろうか。

2020/10/23追記。寿命の長さのことwikipediaに書いてあったし、既に発見されていた…。まだ誰も気がついていないだろう…みたいな感じで書いてて何か恥ずかしい。でもでも、物質の方が寿命が長くないとこの世界は輪廻しないんじゃないかと思っている。人間憧れの「永久機関」を作るヒントにもなりそう。

だが近年、粒子群の中で「物質と反物質の寿命がほんの少しだけ違う」というものが出てきた。最初はK中間子と反K中間子である。そして、B中間子もはっきりと反B中間子とでは寿命が違うことが確認された。日本の高エネルギー加速器研究機構のBelle検出器による発見である。「反物質の寿命がわずかに短かった」(CP対称性の破れ)。これにより、初期宇宙の混沌の一瞬の間の「物質と反物質の対生成と対消滅」において、ほんのわずかな可能性だが反物質だけが消滅し物質だけが取り残されるケースがあり、無限に近いほどの回数の生成・消滅の果てに、「やがて宇宙は物質だけで構成されるようになった」と説明できる。

wikipedia

マスクのはなし…

『精神世界は無重力である』ということを説明したいのに、「反物質」について書いてしまった。でも関係なくはないはず。

とある物理学者の方の考察では「TENET」の表現には科学的におかしいところがある、という意見もあったけれど。

わたしは、いつか「TENET」の表現の完璧さが科学の進歩で証明されると思っている。逆行に酸素マスクは絶対に必要なはず。

何故「精神世界」が無重力なのかは、またじっくり考えて書きたい。「精神世界」は生きていない、過去の人間が住んでいる所。

幽霊って「反物質」だと思う。過去の人間の想念そのものだから。

「精神世界」では時間が「逆行」している

ということで、時間が「逆行」していることについて、まとめてみるとこんな感じ。

私たちが時間を逆行している時は『過去の自分について深く思考』し、その時だけは「精神世界」に存在していると言える。「精神世界」には「死」をもたらす側面と、「生」をもたらす側面があるから、「逆行」しているときはルールに従って、慎重に行動せねばならない。

「精神世界」については、このブログで「日本神話」を紐解きながら解説していきたいと思っている。関連カテゴリからどうぞ。

関連カテゴリ:日本神話を紐解く

登場人物の役割

側面たちの役割

人間に存在する3つの側面

前回、「名もなき男」以外の人物は「彼の側面」であるとの考察をした。悪の側面が「セイター」、善の側面が「ニール」、そして「名もなき男」の対の性として「キャット(女)」が存在している。

人間には必ず『悪の側面・善の側面』が「自分」の中に存在している。そして自分が生まれ持った性の「反対の性」も重要なものである。

私たちは人生の中でこの『3つの側面』と向き合いながら生きていくことになっている。意識しようと無意識であろうと、これは絶対なのだ。

「TENET」の中の3と男

「TENET」の中で『男3人が中心に向い合う場面』が、確か2回あったと思う。作戦を立てるために話し合う男たちの周りをカメラがぐるぐると回っていた場面と、最後のアルゴリズムを分け合う場面。

ノーランがこの『3つの側面』を意識しているのかどうかはわからないが、『3と男』に焦点を当てているような気がする。

それぞれの側面が意味するところを説明しながら、前回の考察で残した謎を解説していく。

「セイター:Sator」の役割

自分を憎む男

「名もなき男」の悪の側面である彼は悲しい過去を背負っている。地図にない街に生まれ、幼少期は核弾頭を探す仕事をしていた。そこで未来の自分から契約書と金塊を受け取る。確かそこで他人を殺していたと思うが、記憶が曖昧である。

彼は「悲しい生い立ち」と「自分」を憎んでいる。「自分」を憎んでいる人間は度々「時間を逆行」している。悲しい過去を思い出しては、憎む。だからこそ、セイターは過去の自分に憐みを感じて過去の自分を直接助けていた。

時間を逆行しすぎる男

その行為は過去の自分が、自分自身で現状を変える力を奪っている。解決策を見つけるための努力をしないことには「逆行する時間(精神世界)」から抜け出せないのである。

苦しみを与えてくる「現実世界」よりも、過去の自分を助け続ける為に「精神世界」にいることを望んだ。その先には必ず『現実世界を破壊する』という思想が生まれることになる。全てを終わらせる「アルゴリズム爆弾」を作ってしまうのである。

「苦しみ」から目をそらす存在

私たち人間には必ず「セイター」のような悪の側面がある。苦しみから目をそらし続ける側面である。また、「試練」と「恐怖」を与えてくる存在でもある。

「名もなき男」が「セイター」からの試練と恐怖に打ち勝った結果、「ニール」という存在が生まれることになる。

「ニール:Neil」の役割

自分を信じる男

善の側面である「ニール」の過去は描かれていなかった。しかし「名もなき男」の相棒として常にニールが側にいた。彼は未来からやってきて、いつでも「名もなき男」を守ってくれた。

「名もなき男」から見れば、未来からやってくる「ニール」は「セイター」からの試練を乗り越え、自分自身の力で現状を変えることができるようになった存在である。

もしも「名もなき男」が「ニール」のことを信じないで「セイター」からの恐怖に負けてしまったら「セイター」という存在に戻ってしまう。ややこしい話になるが「セイター=ニール」でもある。

希望を与えてくれる男

ニールは未来に居るが、過去の自分(名もなき男)を直接助けることはなく、サポートするのみ。映画の中で自分自身の正体をはっきりと明かさないことが、そのことを表している。

「ニール」は希望を与えてくれる存在で、そうすることが「世界の救済」に繋がることを既に知っているからである。

映画の中では「名もなき男」が「ニール」を問い詰める場面があったが、「ニール」は動じなかった。なぜならば自分(名もなき男)を信じているからである。

私たちにも「ニール」のような善の側面が存在する。未来が明るいことを信じていれば、現在の自分自身も信じることになる。

「キャット:Kat 」の役割

男と正反対の性質を持つ女

「名もなき(男)」の対の性としての存在が「キャット(女)」である。私たち人間には、生まれ持った性の「逆の性」が心の中に存在している。男性の中には「女性性」、女性の中には「男性性」。

つまり、1人の人間の中には「男性性」と「女性性」が必ず存在している。人間はこの「男性性」と「女性性」のバランスによって性質が決まると言ってもいい。

男らしい人、女らしい人、女々しい男、サバサバした女、など人間はこのバランスを表現するための言葉を作り出している。

心の中の「男性性」が強い女性

それを踏まえて「キャット」のことを考えてみると、彼女は心の中の「男性性」がものすごく強い。バランスがかなり偏っている。

「男性性」が強い女性の特徴は『自分を守る』ことに重きを置く。まさに「男らしい女」。彼女に足りないものは「女性」の特徴でもある『受け入れる心』。だから「セイター」と仲が悪い。

「セイター」もまた、他人を受け入れることができない男性であった。彼の心は「女性性」が弱すぎていた。強さや支配欲が全面に現れていたことからもわかる。

似たもの夫婦

この夫婦は「男性性」が強すぎるという共通項を持っていた。『心の中の男性性』が大きくなってしまったキャット、『心の中の女性性』が小さくなってしまったセイター。どちらもバランスが「男性性」に傾いている。

「キャット」は「セイター」を受け入れず、そんな態度を許せない「セイター」も「キャット」を受け入れない。

「セイター」は「キャット」の行動の中に『自分自身の悪い部分』を見出していた。だから自分に反抗してきたり、冷たい態度をとられると、自分を見ているようでたまらなくイライラするのである。

夫婦というものは生活を共にすることで『自分の悪い部分』を相手から見出し、自分自身を改善していくべきなのだけど、相手ばかりを否定していると、どんどん関係は悪くなっていく。

「キャット」は死なない

だからこそ「始まり」と「終わり」が重なる、スタルスク12で「ニール」は死亡し、海の上で「セイター」も死亡したのである。エントロピーで生み出された存在(記録)はゼロポイントで消えることが決まっている。

こちらは、前回の考察の引用。「名もなき男」以外の人物はエントロピーによって生み出された存在であるから、ゼロポイントで必ず消える。

それなのに「キャット」が生き残ったのは何故か、という問題。答えは「女」は絶対に死んではいけない存在だから。

「キャット」はこの映画の中でもうひとつ重要な側面がある。それが「母親」という役割。私たち人間は必ず「母親」から生まれる。生と死の側面の「生」を司っている。

「母親」が存在しなければ、私たちは存在しない。だから「キャット」は必ず生き残る。この映画は「終わり」と「始まり」が重なる輪廻の物語であるから、途切れずに続く必要がある。

息子の「マックス」は新しい命である。新しい命は、世界を存続させるために必ず必要なもの。だから母親は子供を守る。

男と女の役割

「女」は命を生み育む役割として大切なものだけれど、「女」だけではこの世界で生きていくことはできない。正しく生き残る為にも、この世界では男の役割と女の役割がしっかりと別れている。

男は強さを持って戦い、家族を養う。女は受け入れる心で子を育て、家庭を守る。夫婦は一緒に家庭を守ることで最高のバランスになるのだけれど、現代では難しいようである。

そのことを知っている「名もなき男」は「セイター」を殺さないように、と考えていた。しかし「セイター」を許せなかった「キャット」に殺されてしまった。

女は病みやすい

女は家の中で家庭を守り子供を育てる、という役割だからこそ「精神世界」へ旅をする機会が多くなる。「精神世界」は心の内側である。「精神世界」に入り込み過ぎることは、危険である。

「子を守る」という特性が、男性に向いたとき、とても厄介なことになる。「子供」を守るという本能があるから、徹底的に「自分」をも守ることになる。そうすると、「自分」の正しさばかりを主張することになる。『受け入れる心』が無くなってしまうと、夫を許すことができなくなる。

因果応報の世界

因果応報が絶対的真理のこの世界では、罪を犯したものには必ず「死」が待つことになっている。「キャット」には死ぬべき原因がある。それは、家族である「セイター」を殺してしまったことである。

しかしこの世界の絶対的真理では『女は絶対に生き残る必要がある』から、「TENET」の中では「キャット」が生き残っている。

この映画の中で「キャット」の死は描かれていない。実は、キャットが『生き残ったこと』と『死ぬべきこと』が「TENET」の「始まり(生)」と「終わり(死)」に対応している。

「始まり」と「終わり」が重なっている輪廻の物語であるからこそ、「キャットと息子」が印象的なラストシーンになっているのである。

次の章からこの物語の核心部分を解説していく。

男と女の永遠の別れ

輪廻の「始まり」に戻る

キャットが「現実世界」で生き残ったことにより、「子」は守られ命は繋がることになった。しかし、セイターを殺したことにより決定的な出来事が発生してしまった。

「キャット」が「セイター」を殺す場面は『男と女の永遠の別れ』を意味する。実はこれが輪廻の「始まり」を表しているのである。

私たちの世界の「始まり」

突然のカミングアウトであるが、この宇宙そのものが『男と女の永遠の別れ』によって始まっている。宇宙物理学者などはビッグバンについて研究しているだろうが、実は「男と女のケンカ」で始まっているだけ。ほんとです。

人間が存在する理由は、この別れの原因を突き止めることである。

「名もなき男」は謎を解いた

「名もなき男」は「ゼロポイント」で宇宙の始まりの原因を知った。まさに「キャット」が「セイター」を殺した事実が、宇宙が創造される原因であることに気がついたのである。

繰り返し言っていることであるが、キャットもセイターも「名もなき男」の側面である。だから2人は彼自身でもある。つまり、宇宙を創り出した原因となるものが『他者を認められない自分自身だった』と、知るのである。

おさらいになるが、原因と結果は自分。自分以外の存在はエントロピーで生み出されているだけ。他者は自分の分身でしかないのに、その他者を認めることができなくなってしまったのが人間という生き物である。

だから宇宙を創造し、男と女という正反対の性質を持つ「性別」を創り出し、「地球」という舞台を用意し『他者を認める為』に輪廻に飛び込んだのである。

「TENET」は解脱の物語

宇宙の始まりにはその原因が必要である。原因と結果が頭の中で繋がったとき「名もなき男」は「創造主」になった。

「キャット」が「セイター」を殺した瞬間が「終わり」であったのに、それが「始まり」でもある、と気がついたのが「名もなき男」

「創造主」は輪廻の仕組みを理解したから、輪廻の中にいたとしても、その流れを俯瞰して見ることができる。これが輪廻から抜け出た状態。

過去起きたこと、これから起きる未来のこと、全てを見通す目を獲得している。これが「全記録」を握っていることを意味するのである。

キャットの目に見えない死

『キャット』には死ぬべき原因があると言ったけれど「キャット(男性性)」の死は「名もなき男」の心の中だけで起こっている。だからこそ、彼だけが輪廻のループから抜け出した。

『心の中でキャット(男性性)が死ぬこと』の意味については、他の記事でも書いているので今回は解説しない。

実は「キャットの目に見えない死」は「名もなき男」がプリヤを殺す場面で表現されていた。プリヤもまた「男性性」が強い女。現実世界の女(キャット)精神世界の女(プリヤ)という対比である。

語りきれない男と女の別れ

わかりにくかったかもしれないけれど『男と女の永遠の別れ』や『心の中の女(男性性)の死』については今後もこのブログで書いていく予定。

「キャット」という存在の解説からなんだか壮大な話になってしまったけど、「TENET」は解脱の物語でもある。

関連カテゴリ:輪廻からの解脱

そのほかの考察

マックス=ニール説

世間では「マックス=ニール」説が賑わっているが、わたしはちょっと違う答えを出していきたい。

「マックス」の正しい名前は 「Maximilien」 らしく、これを逆さまから読むと 「Max-imi-lieN」となる。 これが「ニールはマックス」である、という回文になっているのではないかと。

それから、ニール役の役者が金髪に染め直して出演していることや、キャットとニールだけがイギリス訛りの英語だった、などいろいろな憶測があるのですが、詳しくは他の方の考察を。

わたしのマックス考察

確かに、ニール=マックスというのは間違っていないと思う。なぜなら「マックス」という存在は命を繋ぐものとしての象徴。すなわち「名もなき男」とその側面たちの子孫である。

全ての登場人物の子孫、または祖先として「マックス」が存在している。「始まり」と「終わり」は重なっているので。マックスは「ニール」や「セイター」になる可能性をも秘めているのである。

ニールが金髪であることの意味

ところでニールの髪が金髪である意味について、私なりの考察をしたい。「ニール」は「名もなき男」の未来の姿。しかも善の側面であるから、既に世界を救済している。

対消滅エネルギーは自分が「創造主」だと気がついた瞬間に手に入るエネルギーでもある。それは目に見える「アルゴリズム爆弾」ではなく、目には見えないもの。彼の頭の中(脳)にそのエネルギーは存在する。

前半「反物質」の説明をしているときに、こう書いたけれど、これがニールが金髪であることの答えだと思う。善の側面である「ニール」は正しく生きて「世界を救済」する為の智慧を手に入れた。

対の存在でもある、悪の側面の「セイター」は目に見える「金塊」に執着を持っていた。「金髪」と「金塊」もまた対の表現となっている。

「金(gold)」というのは様々な神話で『完全さ・高貴さ・繁栄』などの象徴として登場する。私はその中でも金は「智慧」の象徴であると捉えている。世界を破壊するものは物質的な「金」を求めるが、世界を救済するものは目に見えない「金」を求める。

完全なる創造主は「兵器」ではなく「智慧」を手に入れた存在である。

私たちの中には必ず「セイター」がいる

だからといって「金」に執着した「セイター」を憎むことは間違っている。「名もなき男」のひとつの側面として、理解すべきもの。

何故ならば「セイター」が存在しなければ私たちも存在しない。子孫の象徴である「マックス」の父親であることは忘れてはならない。

「セイター」は悪の側面を利用して「アルゴリズム」を作った。「セイター」は物質的なものを求めていたが、やはり知恵は持っていた。

「アルゴリズム」とは私たちの「脳(思考)」のこと。「脳(思考)」こそが私たちの生きる舞台や登場人物を創り出している。セイターもまた「始まり」なのである。善と悪どちらの存在も理解しているからこそ「名もなき男」という創造主になれる。

悪の側面が存在しなければ、私たちも存在しない。最悪な出来事を経験したからこそ、正しくやり直すことができる。悪の側面については下記関連カテゴリでも書いています。

関連カテゴリ:こわい神様(悪の側面)

まとめ:「TENET」の世界を図解

ここまでの考察を図解してみた。この図は「TENETの世界」をわかりやすくまとめたもの。この図は「わたしたちの世界」でもある。

tenet-illustrated

赤い円(内側)について

まずは真ん中の赤い円について。こちらは「名もなき男」の世界。彼は「現実世界」を創造している神である。わたしたちの世界では「地球」がこの赤い円そのもの。

考察その1で説明したことを再掲。

実は世界には「自分」しか居ない。目に見えるもの全ては「自分」の内側にあり、それらは存在していない。「自分以外の全てのもの」は自分の内側で創り出されている幻想なのである。その内側の中心に「自分」がいる。

ここで言う中心がこの赤い円の中の「名もなき男/神」である。そして赤い円の世界は「男性性」が支配している内側の世界である。

赤い円の中の順行する時間(赤い実線)について

赤い世界に含まれる、赤い実線について。この右回りの矢印は「順行する時間」を表している。つまり「ニール」という善の側面がこの実線である。未来に進む時間を生きている人は、現実世界を生きているということになる。

赤い円の中の逆行する時間(青い破線)について

赤い世界に含まれる、青い破線について。この左回りの矢印は「逆行する時間」を表している。つまり「セイター」という悪の側面がこの破線である。過去に進む時間を生きている人は、精神世界を生きているということになる。

青い円(外側)について

そして、外側にある青い円について。こちらは「キャット」の世界。私たちの世界では「地球」を包括している「宇宙」のことである。「宇宙」は現実世界の一部でもあるが、精神世界とも重なっている。青い円の世界は女性性が支配している外側の世界。

私たち人間はこの「母なる宇宙」から生まれた存在。キャットの役割についての考察内で『キャットは死なない』と説明したけれど、宇宙という母が存在しないと「名もなき男」も存在しないことになる。

しかし重要なのは、中心である「名もなき男」が青い円も創り出しているということ。この大きな円(赤から青まで)の発生原因は中心に在る。

白い円(始まりと終わり)について

「始まり」と「終わり」が重なる瞬間を白い円で表現している。対消滅が起きる瞬間でもあるから、ここで「名もなき男」の側面であり記録である「ニール」と「セイター」は消滅する。しかし、これは現実世界(赤い円)の中の出来事なのでキャット(青い円)は死なない。

精神世界を生きている悪の側面「セイター」はベトナムの海上でキャットに殺されて死んだ。彼は「母なる宇宙」から捨てられてしまった、ということ。「海上」は逆行する時間(精神世界)の延長線上にある。

現実世界を生きている善の側面「ニール」はスタルスク12で死んでしまった。しかしその場所で彼が「名もなき男」を救った。「ニール」は「名もなき男」の側面だから自分で自分を救ったことになる。「ニール」は死んだけれど「名もなき男」は助かったのだから「母なる宇宙」から生かされた存在。

N(北)とS(南)

スタルスク12は北を表す「N」、ベトナムは南を表す「S」と表現した。先ほど「海上(南)」は逆行する時間(精神世界)の延長線上にあると言ったけれど、反対に「陸上(北)」は順行する時間(現実世界)の延長線上にある。

自分自身を救う救世主(ニール)は「北」に居るものなのである。「TENET」の真ん中が「N」であることも「北」に重要な意味があるということ。

地図でもコンパスでも「北」は「上」にある。スタルスク12は、時計の12時方向のことを指している。こちらも「上」にある。「救世主・北・上・地上」というワードについてのオカルト考察は、別の記事で改めて。

ちなみに、日本の神社境内などには五角柱の「五神名地神塔」という、神様の名が彫られている塔が存在していたりする。その5つの側面の中には皇祖神である「天照大神」の名も彫られている。「天照大神」の面は「北」を向いている。「五神名地神塔」について書いている関連記事もどうぞ。

関連記事:「地神」について

輪廻すること

対消滅が起きた瞬間、赤い円の中で破壊(終わり)と創造(始まり)が同時に起きる。白い円は輪廻のループを作り出すもの。

世界が終わる瞬間には「アルゴリズム(意識システム)」が完成する。その意識システムが起動する瞬間が、現実世界が創造される瞬間。これが輪廻の始まり。「アルゴリズム」によって現実世界という仮想空間が創造されてループが続く。

対消滅が起きる時「記録」は消えてしまうがエネルギーが残る。その残ったものが「マックス」という「始まり」を象徴する存在である。「マックス」は「子孫」であり「祖先」であるから、「始まり」もまた重なっている。

セイターのように「終わり」を迎える者はまた同じ「人間」のループに戻る。「終わり」が来ても、また新しい形の「人間」として輪廻が始まる。「人間の子孫」としてループが続く。これが一つ目の「始まり」。

「ニール」は自分自身を救済して「名もなき男」になった。彼は「意識システム」の構造を完璧に見破っている。ということは「人間」よりも上の次元に進むから「意識システム」を管理する側となる。

つまり、もう一つの「始まり」は「祖先」になること。「人間」を生んだ「神」という存在になる。そして輪廻から抜け出して「新しい世界」へと行くはずなのだが、わたしは人間なのでその世界がどんなものなのかはわからない。その「新しい世界」はキャット(青い円)の目に見えない「死」でもたらされるはずなのである。

目に見えるものと目に見えないもの

現実世界の中(内側/赤い円)にある『目に見えない精神世界』は時間を逆行しているときに行ける世界。人間は時間を逆行して「精神世界」へ行っているが、そのことに気がついていない。

宇宙空間も現実世界の中(外側/青い円)にあるけれど『目に見える精神世界』のこと。現実の中には宇宙も創り出されるが、人間にとって宇宙空間はそう簡単に行ける場所ではない。逆行している「精神世界」と同じく、意識的に足を踏み入れることが難しい場所。

逆行している時に「マスク」をつけるルールがあるのは、この2つの「精神世界」が本質的には同じものであるから。宇宙空間に行くときも空気を供給してくれる「宇宙服(マスク)」が必須である。

「神」に成ることについて

この世界は『男と女の別れ』で始まっている、と先ほどの章の中で説明した。「別れ」で始まっているのだから『神に成ること』というのは「男性性」と「女性性」の統合なのである。一部界隈では、青い円の「母なる宇宙」と同化することが「神」に成ることであると思っているらしい。

彼らは「地球」に存在する自分自身を幻想として消し去ろうとしているふしがある。だからこそ、自分を宇宙からやってきた存在であると言ったり、自分を無我だと言っていたりする。

それでは「神」には成れないのである。宇宙に還っていくこと、宇宙と同化して無我になることは「青い円」に吸収されてしまうこと。「宇宙」の彼方にはブラックホールがあって、その中に入ったらまた「人間」としての輪廻が始まってしまう。

「母なる宇宙」も自分自身が創造している、と信じたときに「神」に成れる。つまり「地球」という「男性性」が「自分」であると強く認識することが「神」になること。尚且つ、外側には「自分(男性性)」を包み込んでいる「他者(女性性)」が存在することを信じること。これが本当の「男性性」と「女性性」の統合であり「解脱」なのである。

自分自身が宇宙の「中心」に存在している、と確信を持った時に私たちは「名もなき男/神」になることができる。

関連記事:日本神話から紐解く『中心に居る自分』

完璧な物語

「TENET」の物語はあまりにも「完璧」すぎた。宇宙の謎までも明かしている。これを越えてくる作品はあるのだろうか…。

「お金」をかければかけるほど、物語は完璧になるものである。私たちの世界で「お金」は重要なもの。智慧の対価としてしか手に入らないものだから。

しかしその「お金」の使い方に「TENET(信条)」が存在しなければ、破滅の道へ。「TENET」は「お金と信条」効果が相まって、素晴らしい作品になったのではないでしょうか。

まだまだ解説したいことはあるけれど、これで一旦「TENET」の考察は終わりにしたい。