エメラルドタブレットとは?

錬金術についての記事に引き続き、こちらの「錬金術:おおいなる神秘」を読んでいて発見があった。錬金術師たちは作業を始める前にエメラルドタブレットの言葉を唱えるらしい。

エメラルドタブレットとは、西暦1000年頃に発見された板。粘土板?ギザのピラミッドの中にあったとの伝説もある。タブレットに書かれた文章だけが今に伝えられている。実物は現存していない。それゆえ、オーパーツとも言われる。もちろん私もオカルト好きとして存在は知っていた。

三重に偉大なヘルメス・トリスメギストス

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By user:Tomisti[1], パブリック・ドメイン, Link

エメラルドタブレットに書かれている文章は錬金術の父ヘルメス・トリスメギストスの言葉とされている。ヘルメス思想の元ともなった、ヘルメス文書の中にでてくるすごい人で賢者。実在したと言われている人物だが、真相は闇の中。

改めてこの言葉を読んだらヘルメスさんが何を言いたいのかなんとなく分かった。そんなわけでわたしの考えた訳を以下に。


エメラルドタブレットのわたし的訳

上段が元の文章で、その下が私の考えた訳です。原文はアマゾンにリンクした、「錬金術:おおいなる神秘」から引用させていただきました。

これは偽りのない真実、確実にして、このうえなく真正なことである。唯一なるものの奇跡を成し遂げるにあたっては、下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし。

錬金術:おおいなる神秘

これはまぎれもないこの世界の真実である。この宇宙の成り立ちを理解するには、この世界にある一番小さなものは一番大きなものと同じということを理解すること。その逆も同じ。

万物が一者から一者の瞑想によって生まれるがごとく、万物はこの唯一なるものから適応によって生じる。

錬金術:おおいなる神秘

この世界にあるものは一人一人の意識から生まれる。それぞれの意識がそれぞれの世界を作っている。

太陽がその父であり、月がその母である。風はそれを己の胎内に運び、大地が育む。これが全世界の完成の原理である。その力は大地に向けられる時、完全なものとなる。

錬金術:おおいなる神秘

この宇宙は太陽と月のような対局するもので創られている。風が流れを作り土がそれを育む。そうして、世界を完成へと導く。(ここの訳はいまいち。)

地上から天上へと登り、ふたたび地上へと下って、上なるものの力と下なるものの力を取り集めよ。こうして汝は全世界の栄光を手に入れ、すべての暗闇は汝から離れ去るだろう。

錬金術:おおいなる神秘

何度も生まれ変わり、目に見える世界と目に見えない世界それぞれを受け入れ、そのつながりを正しく理解したとき、初めて暗闇から解放される。

火から土を、粗雑なるものから精妙なるものを、ゆっくりと巧みに分離せよ。これはあらゆる力の中でも最強の力である。

錬金術:おおいなる神秘

この世界にある、あらゆるものを研究し、技術や科学を発展させよう。人間を超えた力が生まれる。

なぜなら、それはすべての精妙なものに打ち勝ち、すべての個体に浸透するからである。

錬金術:おおいなる神秘

それは、自然のようにゆっくりと世界へ浸透し全ての意識をまた一つへと戻す役割を果たす。


やっぱり、宇宙の真理のことを言ってた

悟りによってオーパーツの謎が解けた。なんだか感動した。それもあたりまえで、悟ることとは真理を知ること。この文章には世界の始まりと終わりが書いてあって「悟りの物語」でもあると思う。

火から土を、粗雑なるものから精妙なるものを、ゆっくりと巧みに分離せよ。これはあらゆる力の中でも最強の力である。なぜなら、それはすべての精妙なものに打ち勝ち、すべての個体に浸透するからである。

錬金術:おおいなる神秘

ここの言葉は、テクノロジーが発達した未来だと予想する。私なりの読み方だけど、私たちが意識せずともテクノロジーのお世話になり精神世界をも受け入れ、悟ることによって全ては一つだったと知る未来。そこまできたら、また最初に戻る。古代の失われたオーパーツたちは未来のものだろう。

ミクロコスモスとマクロコスモスを理解することは真実を理解すること。カオス理論だとかフラクタルだとかはすごくヒントになった。でも、まだまだ分からないことはいっぱいある。この宇宙をいつか完璧に知りたい。

(この言葉の2021年度版解釈を下に追記しています。だいぶ解釈が変わったけれど、テクノロジーが全人類に浸透する時代にならなければ、私たちは最初に戻ることができないのも事実である。)

ーここから2021/1/12追記ー

エメラルドタブレットのわたし的訳 2021年度版

エメラルドタブレットの内容について、2021年の今、もっと深く解説できるようになったので追記してみる。今回はもっと具体的に訳していこうと思う。

二元性について

これは偽りのない真実、確実にして、このうえなく真正なことである。唯一なるものの奇跡を成し遂げるにあたっては、下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし。

錬金術:おおいなる神秘

『下にあるものは上にあるもののごとく、上にあるものは下にあるもののごとし』→2018年、わたしは『この世界にある一番小さなものは一番大きなものと同じ』と訳しているけれど、つまりは、小さい=大きい・天(宇宙)=地(地球)ということである。

私たちの世界は二元性に支配されている。二元性のものを挙げていくとキリがないけれど、一番わかりやすいものは人間の性別で、男と女。もっと大きなもので言えば、太陽と月。日中は太陽が私たちを照らして、夜になると月が私たちを照らす。

小さなもので言えばプラスとマイナス。物質を細かく分けていくと原子になる。原子はプラスの電荷をもつ原子核とマイナスの電荷をもつ電子で成り立っている。

わたしたちの世界は複雑に思えるけれど、不思議なことに、大きなものからとても小さなものまで二元・二極に支配されている。この基本を忘れずにいると応用が効くのである。大きなことを考えるときに小さなことが参考になったりする。逆もしかり。

唯一なるものが創り出すたったひとつの世界

万物が一者から一者の瞑想によって生まれるがごとく、万物はこの唯一なるものから適応によって生じる。

錬金術:おおいなる神秘

『唯一なるものの奇跡を成し遂げるにあたっては…』→奇跡というのは、「唯一なるもの」が「真実」を知ることである。

『万物が一者から一者の瞑想によって生まれるがごとく』→この世界に存在するもの全ては一人の人間から始まり、一人の人間が想像したからこそ生まれている、ということ。

『万物はこの唯一なるものから適応によって生じる。』→「唯一なるもの」というのは、「たった一人の自分」のことを強調している。実は、世界に存在している様々な「もの」「こと」は「自分」という一者から発生しているのである。

どういうことかと言うと、例えば、この記事を読んでいる「あなた」がこの記事を書いている「わたし」という存在を生み出しているのである。全ての目に見える「もの」や「こと」は、世界にたった一人の「自分」が生みの親であるということ。

つまり、それぞれの人間の個の意識が、目に見えている世界をそれぞれ創り出しているのである。「わたし」と「あなた」の世界は同じもののように思えるけれど、まったくの別物なのである。

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太陽と月の子供

太陽がその父であり、月がその母である。風はそれを己の胎内に運び、大地が育む。これが全世界の完成の原理である。その力は大地に向けられる時、完全なものとなる。

錬金術:おおいなる神秘

『太陽がその父であり、月がその母である。』→万物を創造している「唯一の自分(人間)」は太陽と月の子供である。太陽というのは陽の力で「強い心」を表す。月は陰の力で「受け入れる心」を表す。つまり私たち人間は生まれながらに陽と陰2つの力の元を備えているということ。

『風はそれを己の胎内に運び、大地が育む。』→風が表すものは時間の流れ。時間の流れが存在するからこそ私たち人間は成長していく。子供から大人への時間の流れ、人間全体の大きな歴史の流れなど、偶然とも必然とも言える様々な出来事を体験する。

大地というのは人間の精神のこと。万物が織り成す世界の動向の中で、自然や社会や他者との触れ合いの中で、私たちは「強い心」と「受け入れる心」を自分自身の中に取り込んでいく。

『これが全世界の完成の原理である。』→人間(世界でたった一人の自分)はそうやって学びながら、徐々に完成を迎える。完成とは「真理」を知ること。目に見える世界と自分自身の精神は完成への準備を同時に整えていく。全世界が完成する、というのは全世界が「真理」を知る瞬間でもある。

『その力は大地に向けられる時、完全なものとなる。』→人間(世界でたった一人の自分)が学びの中で精神を成長させて「強さ」と「受け入れること」を自分自身の中に十分に取り込んだ時代がやってくる。その精神の成長を表に出す時が完全になる時である。完全になる時とは、自分自身が「創造主」であることに気がつく瞬間でもある。

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暗闇から抜け出す方法

地上から天上へと登り、ふたたび地上へと下って、上なるものの力と下なるものの力を取り集めよ。こうして汝は全世界の栄光を手に入れ、すべての暗闇は汝から離れ去るだろう。

錬金術:おおいなる神秘

『地上から天上へと登り、ふたたび地上へと下って、上なるものの力と下なるものの力を取り集めよ。』→地上から天上へと登ることは「受け入れる心」を完全に手に入れること。そこからまた地上へと下ることは「強い心」を完全に手に入れること。

その2つの力を獲得していれば、目に見えない世界(上なるもの)と目に見える世界(下なるもの)それぞれから力を受け取ることができ、それは着実に自分自身に蓄積されていく。

『こうして汝は全世界の栄光を手に入れ、すべての暗闇は汝から離れ去るだろう。』→上なるもの・下なるもの、2つのものから力を集め続けていけば、いずれ世界を変える力を手に入れることができる。そして精神は暗闇から解放されることになるだろう。

最強の力は希望

火から土を、粗雑なるものから精妙なるものを、ゆっくりと巧みに分離せよ。これはあらゆる力の中でも最強の力である。なぜなら、それはすべての精妙なものに打ち勝ち、すべての個体に浸透するからである。

錬金術:おおいなる神秘

『火から土を、粗雑なるものから精妙なるものを、ゆっくりと巧みに分離せよ。』→火というのは怒りのことである。土というのは、心のことであり、精神の土台となるものでもある。

怒りという単純な感情を基本(二元性)に基づいて紐解いていくと、人間の根底にある複雑な精神が顕(あらわ)になる。怒りに翻弄されることなく、ゆっくりと、人間の精神を解き明かすことが必要である。

『これはあらゆる力の中でも最強の力である。』→火から取り出した、人間の心の根底にあるもの。それは「希望」である。怒りから見出した「希望」こそが最強の力である。

『なぜなら、それはすべての精妙なものに打ち勝ち、すべての個体に浸透するからである。』→「希望」はこの世界に存在するありとあらゆるものに打ち勝つもの。人間が本当に求めているものは、自分自身の内に存在する「希望」である。だからこそ、その最強の力は「全ての個体(人間)」に受け入れられることになる。

最初に戻る

世界はそのように創造された。驚くべき適応はこのようにして起こる。こうして私は全世界の哲学の3つの部分を持つがゆえに、ヘルメス・トリスメギストスと呼ばれる。私が太陽の働きについて述べるべきことは、以上である。

錬金術:おおいなる神秘

『世界はそのように創造された。驚くべき適応はこのようにして起こる。』→たった一人の自分(人間)の内に存在する「希望」が他の個体全て(他者)に受け入れられた時、新しい世界が創造されるのである。世界の創造とは、万物が創造される初めの一歩。つまり、その瞬間に万物を創造する「唯一なるもの(自分)」が生まれる。再び最初に戻るのである。

3つの智慧を持つもの

以上が、2021年のわたしが訳したエメラルドタブレットの全貌。2018年には最後の文章を載せていなかったので、追加してみた。

ヘルメス・トリスメギストスは3つの智慧を持っている。1つ目は「強い心」について。2つ目は「受け入れる心」について。3つ目は「希望」について。この3つが「唯一なるもの」の中に揃ったときに、初めてエメラルドタブレットの意味がわかるようになるのかと思う。

そして重要なのは、これら3つ全てが太陽の働きによって現れること。陽の力は「強い心」。3つの智慧の中で一番獲得するのが難しいものであり、全ての始まりでもある。

今回訳した内容については、別の記事でもちょこちょこ説明してたりするので、ぜひ読んでみてほしい。

カオスから抜け出すこと

大いなる作業とは

最後に、エメラルドタブレットの原文を引用させていただいた「錬金術:おおいなる神秘」から、私たち人間にとって大切な教訓となる言葉を見つけたので紹介する。

そして、物質を形作っているさまざまな要素を分解し、分類してから、もう一度調和のとれた形で統一し直さなければならない。これが物質を賢者の石に変える霊化作業である。

錬金術:おおいなる神秘 P.77

これは錬金術師たちが「賢者の石」を手に入れるために行う大いなる作業の方法である。大いなる作業とは「人間がミクロコスモスの中で造物神(デミウルゴス)となるために必要な行為全体のことなのである。(P.76)」とのこと。

分解し、分類すること

世界には様々な問題がある。相変わらず人間たちは社会問題について議論し、争っている。それら問題を解決する方法を「大いなる作業」は教えてくれている。

複雑に思える全ての「できごと」や「ものごと」は、とても単純な構造になっている。しかし、人間は新しい言葉を作り過ぎてしまった。複雑で難解な言葉のせいで脳内の整理整頓が出来ていない。

シンプルな言葉で置き換えてみたり、昔からある言葉だけで考えてみると、複雑な問題は実はすごく簡単な構造になっていることに気がつくのである。これが「要素を分解し、分類」すること。全ての「できごと」「ものごと」は引き算していくと最終的に「二元・二極」になってしまうのである。

最近は意識高めな横文字を使う人が増えていたり、哲学マニアな人々は難しい言葉を使いたがる。それが問題をややこしくしていることに気がついてほしい。

賢者の石を見つけたいのならば、最初に戻ることが肝心。人間は複雑さに慣れ、複雑さに支配されてしまっている。カオスから抜け出そう。

カオスから抜け出し、頭の中で調和し、統一のとれたものとして表現する。それが出来た時、わたしたち人間はやっと「造物神(デミウルゴス)」に成れる。「唯一なる自分」が創造主であることを信じるには、大いなる作業(探求と忍耐)が必要なのである。